やりたかったのはバルササッカーの実現 キリンカップ日本対ペルー前半戦

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キリンカップの日本代表戦前半、解説者らは「やる気がない」「楽しそうじゃない」と批判し、ネット上でも「昔の日本に戻った」と批判書き込みが殺到しました。

選手たちがピッチ上で行っていたのは、シンプルなパスまわし。
激しく動きまわるのではなく、パスをもらい、近くの人に簡単にはたき、無理をしない。

この動きが、アジアカップのアグレッシブなサッカーが印象に残っていた人々に悪印象を与えました。

一方で、この動きは何かに似ていると感じた人も少なからずいたはずです。

先週、世界一になったバルセロナのスタイルです。

パスを受けた人が無理に反転して前を向いたり、ボールを保持して動き回ったりすることが、バイタルエリア直前までほとんどなく、確実なスペースがあったときのみ、猛烈にドリブルでかけあがる。
パスをさんざんまわして、敵に精神的に疲れさせたころに、必殺のスルーパス。

これをやろうとして上手くいかなかったのが日本代表の前半戦でした。

シンプルにパスをさばいていたこと自体が悪いことではなく、見た目が悪いだけ。見た目は悪いが、これが世界一のやり方です。

バルサはマンUもレアルも破って世界一になりました。
サッカーの魅力をつぶすようなカウンターで各チームは対抗しましたが、無駄でした。
結局は、世界一になるには、バルサ的なサッカーの構築にチャレンジするしかないのです。

しかし、なぜか世界のサッカー界で世界一のはずのバルササッカー(ポゼッションサッカー)を実現できているチームが他になかなか見当たりません。
それが出来ない理由というのが、サッカー界にはあるのです。

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バルササッカーを実現できない理由

オランダのリーグで活躍する日本代表の安田は、チームメートがパスしたあとにボールを返さないので、自分も返さなくなったと言っています。
下部チームこそ、「這い上がりたい」という欲求をそれぞれが持っていて、ボールをキープし、活躍しようとします。





そういう人は、バルサの中には入れません。

バルサはとにかくパスをまわし続けます。
余計なことを考えずに、フリーの人にまわし続けます。
バックパスという概念もないほど、360度パスを出し続けます。最後は、たまたまゴール近くにいる人が決めます。
バイタルエリアからの最後の仕掛けでやっと、メッシが個人技を使います。

かつてバルサにはリバウドという完全個人主義のヒーローがいて、彼がボールを持つと今までのパスの流れを断ち切り、彼がやりたいようにボールを持ち直して、ゴールを決めるというシーンが目立ちました。
ジダンも中村俊輔も似た感じです。

グアルディオラ体制のバルサはどんどんそういう人を排除してきました。
イブラヒモヴィッチでさえ1年で放出。
必死にバルササッカーを実践しようと努力していたのですが。

「這い上がりたい」「活躍したい」というエゴは、バルササッカーの邪魔になります。

しかし、代表チームは「活躍したい」人が集まります。
所属チームと違い、活躍することで代表に残りたいと思うからです。

マラドーナ率いるアルゼンチンサッカーは、あえてそういったエゴを使って、選手頼みで勝とうとしました。
マラドーナ自身がそうだったからです。

それが、メッシが活躍できなかった理由です。

メッシはバルサでやっているように、簡単にパスをはたきます。やる気がないかのようです。
メッシはすぐにパスが返ってくると期待しますが、受けたチームメイトはドリブルしたり、こねくりまわしたり、いろいろしようとします。
リズムなんてありません。

そういった状況をみかねて、マラドーナは「もっと自由にやれ。バルサのときみたいに」とわけのわからないことをメッシに言います。

敗戦まで、ごりごりにエゴを出したテベスらの活躍で勝ち進みましたが、メッシのゴールはついにありませんでした。
それほど、代表チームとバルサのサッカーはかけはなれていました。

イングランド代表もしかり。
ブラジル代表もしかり。
ドイツはカウンターなのに、パスはシンプルで的確でした。スペインに負けましたが。

代表で唯一バルササッカーを目指したスペインが優勝したのも、当然です。

もし日本代表のそれぞれがエゴを捨ててバルササッカーに没頭できたら、他から抜き出ることができるかもしれません。もともとあまりエゴがないので。

しかしもう一つ、代表チームがバルササッカーを実践できない理由があります。

代表チームがバルササッカーを実現できないもう一つの理由

このスタイルを実現するためには、どんな大舞台でも落ち着いて、確実にフリーの仲間にパスを出せるメンタルの強さがまず大事です。

高いラインでボールをまわす限り、適当なパスをカットされるとカウンターですぐ失点。
これをモウリーニョはいつも狙います。

今回の前半にもそういうシーンが何度かありました。
これは、初選出メンバーや若手の、日本代表に選ばれた、もしくはスタメンに選ばれたという緊張感が絡んでいたはずです。

フリーの仲間に、パスカットされないパスをシンプルに出す。受ける側は、後ろに敵を感じたら、すぐに近くの仲間にパスを戻す。
バイタルエリアでの最後の勝負も、本当にいけると思ったときしか、勝負をかけない。
ちょっとでもダメだと思ったら、うしろのフリーの仲間に戻す。
一見、やる気もスピードもなさそうです。
しかし、互いのチームがバルサ的サッカーをするような時代になると、その精度こそがキーになります。

代表は結局、最後には大舞台が待っています。
ワールドカップ出場権をかけた大事な試合や、ワールドカップ本戦。
その緊張感の中で、集中力を持って確実なパスを出し続けることができるか。

代表チームがバルササッカーをやる場合、そこが大事です。

つまり、大舞台に動じないベテランが必要になってきます。

日本代表にそんなベテランはいるでしょうか。

本田は、その点で実践を重ねています。
ワールドカップのころからシンプルに味方にボールをはたいて、すぐにまたパスを受けられるフリーの場所に立つ。
というのを繰り返していました。

遠藤、長谷部も経験値とメンタル面でトップでしょう。

内田、長友のチャンピオンズリーグでの経験値は落ち着きを与えてくれます。

香川はたぶん、生まれつき落ち着きと集中力があります。

センターバックにはパスが得意な選手が必要です。

右と左のフォーワードも悩みます。
関口は不用意なパスが目立ち、自分で仕掛けるタイミングも適当で、まったく不合格。代表という舞台に焦りがあったのと、活躍したいという思いがプレーに出ていました。

西はバルササッカーを実践しようとしていただけで、まわりのサポート不足。初舞台で緊張もあったかもしれません。

メッシ的なポジションにするべきの前田はセンターフォワード的な動きを命じられたのか、前線に張り続けるというミス。ここは香川にやってもらいたいです。

岡崎はたぶん、戦略を理解していない。いつも焦りすぎ。
でも今後はわかりません。

若手を代表チームで使うためには、海外やACLで大舞台の経験をどんどん積んでもらいましょう。

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困難だからこそ、やり続けてほしい

セリエAやプレミアリーグのサッカーを見慣れた人にとっては、今回の前半は「魅力がない」となりましたが、バルササッカーとそれ以外のサッカーは、異次元です。
結局は、バルササッカー、つまりポゼッションサッカーを極めるチームがその他を駆逐していきます。
いち早くバルササッカーに近づけたチームが、高みに行けます。
しかし、困難です。
困難だから、やろうとすると失敗。
かつての浦和のように、失敗します。
すると、批判され、勝てなくなり、元に戻ります。

元に戻ると、個人で無理な突破を仕掛けたり、リズムがまったくなくなります。
今シーズンのJリーグ、柏対浦和戦はそれを象徴していました。
2部に降格して選手のエゴを消し去った柏は、シンプルなパスでチームプレイを徹底。
1部でも特別なヒーローを生むことなく勝ち続け、浦和さえも翻弄。
一方、柏木頼みの浦和はエゴだけのチームに成り下がっていました。
柏木がボールを持って、少し間を置いてからスルーパスを出すところなど、まさに中村俊輔やジダン、ロナウジーニョがやっていたプレイを彷彿とさせます。

スペイン代表は「個人の力で勝てる時代は終わった」と、世界中にヒントを与えていますが、実践はなかなか難しい。
上に這い上がりたいという選手個人の欲求と、代表特有の大舞台の緊張感。
そして、スター選手を集めるという代表選考の基本。

個人技に長け、激しいポジション争いを勝ち抜いてきたスター選手がチームに1名か2名いるのが各国リーグで、そのスターを集めるのが代表。

もし世界各国の代表がスター選手をかき集めるのをやめて、チームプレイを徹底したら、どんな代表チームも今より強くなるかもしれません。

日本代表はどうでしょうか。
もし乗り越えられたら、きっと面白いことになります。
それまでは、大変です。

かつて、ワールドユース準優勝という大記録を刻んだ黄金世代には、エゴがない小野がいました。
遠藤も小笠原もいました。
本山はシンプルなパスという面では天才的。
シンプルにボールをはたいて素直にサイドをかけあがる加持もいました。

黄金世代は、偶然生まれたエゴなし集団。

ジーコジャパンは国内メンバーでアジアカップを制しましたが、メンバーは黄金世代が中心でした。

その後、中田と中村というエゴ的なスターが入ることで、チームは崩壊しました。

W杯オーストラリア戦は小野が入ったあとに失点したので、小野が戦犯扱いされていますが、そんなはずはありません。

ボランチでバランスをとるはずの中田が前に上がりすぎ、中田ともめていた宮本らディフェンダーは相手の攻撃が怖くてラインを下げ続けたからです。

本来監督が決めるはずのラインの高さと、プレスをかける位置をぎりぎりまでジーコが指示しなかったのが最大の原因です。

選手のエゴに任せてしまったジーコの責任。

そのせいで中田は宮本ら選手全員と揉め、疲れ果てて引退しました。敗戦後の日本料理屋で食事をしていた小野は、中田の予約があることがわかるとすぐに店を出ていったそうです。それほど中田は悪役になっていました。

さて。
今の日本にエゴの強い選手はそもそも、あまりいません。
バルササッカーの構築には絶好の機会です。

香川のような選手がいることは、バルササッカーをしたい代表監督にとってとんでもないチャンスです。

今回の批判でザックはくじけるのか。
今後の行動が楽しみです。

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