「個」で崩壊した2006ドイツW杯。
本田は意識的に「W杯優勝」を口にして、メンバーたちやメディアの意識改革をしている。
その点は革命だが、先日の「チームワークは持って生まれたもの」発言は、少々危険な匂いがする。
初戦でオーストラリアに敗れた悪夢のドイツW杯は、まさに「個」のチームだったからだ。
中田、中村、小野、宮本、中澤。
ジーコは「個」の力を信じ、個が集まれば勝てると思っていた。
そして、W杯期間中、「個」はぶつかりまくった。
まず、プレスのかける位置だ。
中田は早めのプレスを主張したが、宮本は一度自陣に戻ってからのプレスを主張。
他のメンバーは口を挟める雰囲気ではなく、二人の口ケンカはいつまでも続いた。
しかし、これは監督が決めることだ。
今季チャンピオンズリーグで活躍したバイエルンもドルトムントも、プレスをかけるタイミングこそ、チームが勝つための重要な戦術であり、「チームワーク」だ。
ジーコは攻撃の選手であり、プレスについては知識がなかった。
予選は国内選手を中心としたチームであり、99年ワールドユースで準優勝した小野や小笠原、稲本の黄金世代チーム。
チームワークが抜群で、みな性格も穏やかだった。
このチームワークを壊したのが、中田だった。
近寄りがたい雰囲気を作るのは得意。同時に、静かな俊輔も人一倍負けず嫌い。
黄金世代中心のチームはそのままワールドカップで結成できず、ジーコジャパンは崩壊した。
今、インテルやマンUで活躍している選手の特長は、笑顔にある。
常に笑顔で、チームメイトに溶け込むのがうまい。
まるでバルセロナの選手たちのようで、レアル・マドリーのようではない。
本田はやはり、後者に合っている。
日本に必要なのはより強い「個」であるのはたしかだが、本田が主張するような「前に出ようとする個」なのか。
本田がボールを持って立っていたあのシーンで、香川が「僕が蹴ります」と主張したら、彼はどうしたのか。
かつての俊輔のように、鼻で笑ったのだろうか。
蹴る選手を決めるのは監督だ。
プレスの位置も厳格に決めるのが監督だ。
どんなに厳しく細かく監督が選手に指示しても、日本選手はクラブチームのようにしっかり機能する。
日本人選手はバルセロナのように、パスを選択せずに無理にシュートを打つようなことはしない。
かつて柳沢が主張し批判されたような、「確実に決められる人にパスをする」し、それがモダンである。
今の代表チームは見ている限り、仲がいい。
選手は穏やかで、チームワークもある。
しかし、かつて中田が入ったことで崩壊したドイツW杯の日本代表のように、本田が他メンバーから「いらない」と思われたとき、チームは崩壊するかもしれない。
「個」よりも「チームワーク」。
これは、ドイツを経験した私たちの合い言葉である。
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