ドイツが制作した二つの「タイタニック」

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タイタニックの映画化の歴史は古く、1912年の事故の1ヶ月後には生存者の女優による脚本・主演の映画がアメリカで公開された。

 

しかし、今となっては伝説となったこの映画のフィルムは現存していない。
この作品に限らず、当時の無声映画は、そのほとんどが失われてしまったという。

 

それだけに、1998年にあるコレクターが「気づいて」くれたことに感謝したい。
ジェームズ・キャメロンの「タイタニック」で世界中がブームになったせいなのか、ドイツの映画コレクターが、昔手に入れたある映画が、貴重な価値を持っていることに気づいたのだ。

 

それは、事故2ヶ月後にベルリンで制作されたサイレントのタイタニック映画「In Night and Ice」だった。

 

この映画は、実際のタイタニック号のニュース映像が多く使われたことで知られていた。
が、他の無声映画同様、フィルムは失われた。というのが定説だった。

 

発見されたフィルムには、伝説の通り、タイタニックの乗船時の様子がしっかりと刻まれていた。
その価値は、コレクターの想像を遙かに超えるものだった。


映画の中では、事実と違う描写が当然のごとく登場する。映画ではボイラーが爆発するが、実際は沈没中にボイラーは爆発していない。また、劇中に船長は氷山の衝突を目撃するが、実際は部屋にいた。

 

衝突時に乗客が派手に反応するのもおかしい。実際の衝突は誰も気づかないほどのわずかな揺れしかなかった。

 

それでも、このフィルムを観るという経験は貴重としかいいようがない。

わずか35分の映像は、当時の雰囲気を知り、当時の映画作りを知るという貴重な経験を人々に与えたのだ。

 

 

 

 

1943年には、再びドイツで「Titanic」が制作される。これは、戦争中にナチス・ドイツが制作したもので、プロパガンダに使われたと言われている。

劇中には実在しないドイツ人航海士が登場。彼は船が氷原に入ったため、速度を落とすようイギリス人船長に懇願するが、聞き入れてもらえないどころか、罵倒される。「イギリス人は悪者」という図式だ。

船が氷山に衝突してからは、船室に閉じ込められたドイツ人少女を助けるといった緊迫シーンを作って盛り上げている。

 

 

戦後の1953年には、ナチスの「Titanic」を葬るためか、アメリカ制作の「Titanic」が公開。これは20Th Century Fox制作のハリウッド映画で、メロドラマの要素が導入された。しかし、その力作を評判で凌いだのは、イギリスが1958年に制作した「A Night to Remember」だった。今までの定番だったファーストクラスの乗客からの視点から、二等航海士の視点で沈没の真実を描いたのが新鮮だったという。この作品では当然、存在しなかったドイツ人航海士は船長に文句を言わない。

ジェームズ・キャメロンの作品は1997年。アメリカ、ドイツ、イギリスで作られた多くのタイタニック映画を超えて、不朽の名作となった。

CNNの動画の紹介文にはこう書かれている。

宣伝省のゲッペルスとキャメロンは、長い線で繋がっているーーー。

 

キャメロンには迷惑な紹介文だが、マニアの彼は何度もゲッペルスの意図が反映されたあの映画を観ているのかもしれない。

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