海外取材とモバイルデバイス。「旅の懸念はすべて解決された」

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この一週間、クロアチアに撮影取材に行ってきた。

その際、モバイルデバイスの使い方について、感慨深いものがあったので書き留めておく。

 

まず私が最初に海外で取材を行ったのは、NYだった。

ハーレムの様子を写真に撮り、旅行記を雑誌に掲載するという仕事だった。

その同時多発テロの年だから、2001年の年末。

アナログの一眼レフを手に旅をした。

 

2年前にもプライベートでNYを旅行したが、そのときは80万画素程度のデジタルカメラで撮影していた。

今そのときに撮った写真をレティーナディスプレイで見ると、米粒みたいに小さい。

 

だから2001年もまだ、仕事ではアナログを信用していたのだろう。

当時はノートパソコンを使っていたが、それは所持せず、携帯はおそらくボーダフォン。

電源は、当然切っていた。

 

その後、イギリスでの取材が増える。

「一人でイギリス全土を一ヶ月かけて一周する」という企画では、出発前にすべての行程(電車の出発時刻、どこでタクシーを使うかなど)をすべて調べ上げ、現地で再び調べる必要がないようにした上で旅をした。

携帯はやはり使わなかった。

事前の取材のおかげで旅は順調だったが、エジンバラで事件が起きた。

バスで宿に着くと、まだチェックイン時間ではなかったので、隣の宿に荷物を預かってもらい、市内に出かけた。

しかし、その際に宿の住所のメモを置いて出てしまった。

気づいたのは、バスに乗ってからだ。

降りる駅がわからなくなった。

 

適当に降りて、地元の人に宿の方向を尋ねるのだが、宿の名前を覚えてないので、伝わるわけがない。

どの方向を見ても同じような町並みで、完全に途方にくれた。

 

最後は勘を頼りになんとかたどり着いたが、相当な冷や汗体験だった。

 

しかし、そんな体験も今思えば、時代のせいだ。

 

 

海外でドライブすることの難しさ

 

その後、デジタルカメラを持っての旅が始まる。

そして、Macbook Airを持つようになって、取材帰りのヴァージンエアで記事を書くようになった。

 

コペンハーゲンの旅では、現地で原稿を書いて、そのまま特集記事がアップされたこともある。

 

そのころまで、旅でいつも困ったのは、いつも地図だった。

一つの街ならいいが、街から街への移動、しかも車となると問題は大きい。

『小林涼子 10代最後の小旅行』という写真集では、クロアチアのザグレブからアドリア海まで車で移動したことがある。

運転するのはマネージャーのS氏。

紙の地図片手に、空港からザグレブの宿までが、まず大変だった。

どこで曲がればいいのか、曲がり角に近づくまで分からない。

自分がナビするのだが、曲がる場所を前もって伝えることができない。

S氏は現地の地図がまったく頭に入っていないのと、慣れない海外の運転ともあってナーバスになっている。

何度も道に迷った挙げ句、なんとか素敵な宿にたどり着いたが、

あさってにはアドリア海へ向けた250キロのロングドライブが待っていた。

 

そして出発の日。

ザグレブから高速に乗るというだけでも、まず難しい。

地図を見るだけでは乗り方がわからない。

なんとか乗れたとしても、降りるのはどうするのか…。

 

200キロほど走ったリエカという街で高速は終わったのか(終わったのかどうかさえよくわからない)、道は二手に分かれた。

工事があったために複雑になっていて、よくわからないまま一方の道を選んだ。

瞬時に判断などできないのだ。

 

私たちはリエカを通り過ぎたかったのだが、残念ながら車はリエカの街に迷いこんだ。

その後はスーパーの駐車場に車を停め、ローカルの人に尋ねながら、なんとか再出発し、目的地にたどり着く。そういった緊張感あふれるドライブだった。

 

今では笑い話だが、そのときにS氏とナビについてピリピリとしていたのを本当によく覚えている。

 

 

やはり、迷いに迷う。

 

海外で道に迷うのは得意だ。

マドリッドでもやってしまった。

ジム・ジャームッシュの映画『リミッツ・オブ・コントロール』の取材で、マドリッドに単身旅したときのこと。

夜中にマドリッドに着いたはいいが、プリントアウトしたグーグルマップに乗っていたその場所に、宿はなかった。

おそらく、微妙にずれていたのだ。

 

しかし、そこでの微妙なずれは、永遠でもある。

ネットが使えない限り、もう場所はわからない。

 

時間は1時すぎ。マドリッドは犯罪が多いから夜中に歩かないように警告されていたが、そこはまさに犯罪の多そうな繁華街。

使い方のわからない公衆電話を使ってなんとかホテルのフロントと話せたが、小さいホテルで英語が通じない。

さすがにやばいと、公衆電話の前で落ち込んでいる私を見つけたカフェの女性店員が、英語で声をかけてくれた。

彼女はタバコを吸いに外に出ただけだったのだが、優しくもかわりに電話をしてくれた。

おかげで場所が特定でき、2時ごろに無事、ホテルにたどり着いたのだった。

グーグルマップ恐るべし。

 

 

 

GPSデバイスの登場は画期的だった

 

「海外でのドライブは難しい」

この難題を解決してくれたのが、GPSデバイスだった。

ガーミンのGPSデバイスを購入し、ハンガリーからクロアチア、スロベニアを旅する写真集で使用したのだ。

この商品を選んだ理由は、GPSデバイスはネットを使わないので、海外でも料金がかからないから。

すでに、海外パケ放題はあったのかもしれないが、「パケ死」が問題となっていたころだった。

 

GPSデバイスは単に自分の現在地を知るために持っていたのだが、車でもその力を存分に発揮した。

ナビ機能があるので、どこでどの車線により、何メートル先を曲がるかまで音声(英語)で知らせてくれたのだ。

 

それに、突然の変更にも対応する。

帰りに時間が余ったのでウィーンに立ち寄ったのだが、GPSのおかげで迷わずに済んだ。

というか、安心感がもの凄かった。

 

このときは、念のため、グーグルマップで主要部分のスクリーンショットを撮り、iPodにコピーしておいた。

電話はソフトバンクのブラックベリー風な携帯で、使用はしなかった。

 

 

はじめてのパケ放

 

かたくなに海外での携帯使用を拒んでいた私だったが、去年のフィリピン取材で「はじめてのパケ放」を経験した。

携帯はiPhoneで、取材内容はボラカイ島やマニラのストリートを紹介するものだった。

そのため、パケ放題にしてナイキのランニングアプリを使い、行程を記録した。

ガーミンも行程を記録するので、iPhoneのバッテリーが切れるとガーミンを使った。

 

パケ放なので、ホテルからのフェイスタイムも使った。

私の当時の感覚では、昔はホテルでWifiが使えるところが多かったけれども、最近はお金をとったりするな。という感じがしていた。

ホテルがいろいろ変わる旅だったので、やはりWifiが使えないところも多く、ストレスフリーでネットを使えるのは非常に頼もしかった。

 

 

もう、紙の地図はこの時点でまったくいらなかった。

事前の周到な用意もいらない。

iPhoneさえあれば良かった。

また、2回目の撮影旅行では、被写体である池田裕子とテザリングし、彼女が随時ブログやツイッターを更新できるようにした。

 

最初のころは旅のお供だった初代のMacbook Airも古くなったので、持ち運ぶのはやめた。

2回目のフィリピンはGPSデバイスも持って行くのをやめた。

必要だったのは、iPhone5だけだ。

 

 

そして今回、クロアチアの撮影。

とにかく荷物を軽くしたい私は、1週間という長い写真集撮影にも関わらず、デバイスはiPhoneに絞り、比較的軽いMacbook Pro(DVDなし)も持って行かなかった。

海外パケ放題を使う予定だったが、編集部と事務所がそれぞれ海外用モバイルWifiを携帯していたので、ネットはどこでも快適に使え、パケ放を使う必要はなかった。

 

当然、今回も地図の心配は一切ない。

いざとなれば、iPhoneやグーグルマップのナビ機能も味方してくれる。

 

それよりも、便利で驚くことがいくつかあった。

 

まずは、iPhoneでの撮影だ。

撮影すると、その海外の都市名が記録され、一覧で見れる。

写真アプリの下に写真、共有、アルバムとあるが、この写真を選択すると出てくる。

マップ形式でも表示されるので、あとで場所を特定するのに便利だ。

 

次に、写真共有機能。

写真集のイメージを共有するために、iPhoneのストリームにイメージをアップし、iPhoneを持っているスタッフをメンバーにしていた。

すると、参加したスタッフらが、現地で撮影した写真を次々アップしはじめた。

これはiOS7からの機能で、以前はストリームのオーナーしか写真はアップ出来なかった。

おかげで、旅の思い出はここに全部詰まっている。

 

そして、GPS機能。

コルチュラという島に向けてドライブしているときに、誰かが気づいた。

Wifiを切っているのに、グーグルマップが使えている。

「そういえば、グーグルマップはオフラインでも使えるようになったとかいう記事を読んだような…」

実際には、一度地図をオンライン時に読み込んでいなければ灰色の画面に青のマーカーが光るだけだが、読み込んでいた数人は自分の場所をリアルタイムで把握できていた。

これは海外パケを使わずにGPSマップが使える素晴らしい機能だ。

 

 

最後。

トルコ航空の飛行機で事件は起きた。

搭乗中、目の前に「Wifi」の文字。

詳しい説明はないので、日本人客の誰もが無視していた。

しかし、それはやはりWifi使用についての表記だった。

 

飛行機で見る画質の悪い映画が嫌いな私は、特に機内ですることがなかった。

そして、Maashで気球Wifiといった飛行機上でのWifiサービスの記事の記憶があったので、もしやと思いiPhoneでWifiをオンにした。

 

すると出てきたのは、トルコ航空のページ。

そして、Wifiの文字があったのでクリックした。

そこには英語で、Wifiに関する質問の数々。アンサーは「無料で誰でも、安全に使える」。

ただし、それだけでは他のページが見れない。

画面に表示される番号を入れて、アクセプトにチェック。

 

すると、ネットに繋がったのだ。

 

試しに機内の写真を撮ると、しっかり場所も記録された。

iMessageもLINEも使えた。

 

10時間のフライトで、iPhoneによるネットは快適そのものだった。

 

 

 

 

というわけで、私の海外の取材で必要なものは、本の地図からiPhone5になった。

滞在先で見たIKKOの出演番組記事が面白そうだったので、ネットを使ってnasneで録画予約もできた。

オランダ、ベルギー戦はネットで記事を読んだあと、すぐにYoutubeでダイジェストを確認した。

機内から日本の家にフェイスタイムやLINEで電話もできたのだろう。

 

必要なデバイスは一つに絞られたが、増えたものがある。

モバイルバッテリーだ。

 

ブルートゥースのヘッドセットも、モバイルといえば増えたものの一つ。

 

しかし、iPhoneもヘッドセットも、モバイルバッテリーのおかげで切れることはなかった。

本当にすべてが安心だった。

ここ10年で、海外取材の事情は大きく変わったのだ。

旅での懸念がないことに拍子抜けしてしまうほど、便利になってしまったのだった。

 

 

文 Rem York Maash Haas

http://remyork.tumblr.com 

 

 

 

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