メトロポリタン美術館が手に入れた10億ドル相当のキュビズム・コレクションとエスティ・ローダー、そしてナチス。
レナード・ローダーという化粧品会社重役のキュビズム・コレクションが、メットに寄贈されることが決定した。
ピカソ、ブラックを含めた78作品は、世界で最も卓説したキュビズム・コレクションとして知られ、10億ドル以上の価値がある。
ローダー・コレクションは、メットを「変身」させるほどの威力があり、メットの重要なコレクションとして今後位置づけられる。
公開は2014年秋予定。
ところで、化粧品会社はどこだろうと調べてみたら、あのエスティ・ローダーだった。
米版ウィキによると、レナードは1933年、5月19日生まれ。
父ジョセフと母エスティの次男として生まれた。
エスティ・ローダーは1946年にニューヨークで始まり、4種類のスキンケア商品を販売。2年後に大手デパートでコーナーが設けられた。
その後は順調に成長を続け、現在、会社のブランドはEstée Lauder, Clinique, MAC Cosmetics, Aveda, Bobbi Brown La Mer(ウィキより)など。
レナードは1999年までチーフ・エグゼグティブ。現在名誉チェアマン 。
彼は1958年、25歳のときに入社したが、翌年、教師だったイブリンと結婚した。
彼女は後に、新製品のディレクターとして活躍する。
この二人の結婚と、今回の寄贈に、なにやら因縁めいたものも感じてしまう。
ジョセフという名からも推測できるが、ローダー家は東欧系ユダヤ人。
おそらく、1900年初頭、ロシアや東欧で起こっていたポグロムという迫害によってニューヨークに移住してきたに違いない。
ピカソやブラックがキュビズムを始めたころだ。
そして、第二次世界大戦前、イブリンも両親とともに、ナチスの迫害によってオーストリアからニューヨークに逃げてきたのだった。
そのころ、ピカソを含め、多くの優秀な芸術家が集まっていたパリ。
ポグロムで無くなった故郷を描いたユダヤ人シャガールもいた。
だが、その華やかな時代を終わらせたのは、他ならぬナチスのパリ占領だった。
1900年から40年ごろまで続いた芸術の一時代を終わらせたナチスと、ユダヤ人迫害によってニューヨークに移住し、成功したローダー家とイブリン。
そしてキュビズムの作品はローダー家に守られ、彼らを救ったニューヨークの美術館に寄贈される。
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