決勝のスペインは他のどの試合よりも華麗だった。
パスワークは早く、選手間のサポートも徹底していた。
フォワードを使わず、たまたまゴール近くにいる人がゴールを決めるというスタイルも成功した。
ゼロフォワードがユーロという大きな大会で優勝できるということも証明された。
ゼロフォワードでチャンスをなくしたのは、トーレスだった。
チャンピオンズリーグ決勝ではスタメン落ちで落ち込んだというトーレスは、今回の決勝でもセスクに負けてスタメン落ちした。
デボルスケ監督にとっては、パスを受けに戻り、また走るという流動的フォワードが必要で、前線に張ってスルーパスを待つトーレスは理想ではなかったようだ。
そのトーレスが、2-0でイタリアは選手がひとり少ないという落ち着いた状況で登場し、トーレスのスタイル通り、抜け出してゴールを決めた。
その時点で今大会三点目。バロテッリやロナウドに並んで得点王トップタイとなった。
そして、イエニスタに替わってマタが登場した直後、再びトーレスが抜け出した。
得点王のチャンス。
直前に、トーレスはパスミスを犯していた。
安定したパスの交換を前提したチームにおいて、明らかにパスはうまくいっていない。
その時点で不合格だったが、スローインで最終ラインからブスケツに渡ったボールは、すぐに前線のトーレスに渡った。
ポゼッションサッカーというよりは、ショートカウンターだった。
ブッフォンと一対一になったトーレスは、右に切り返してコントロールをすれば決められる。
左に走ってシュートフェイントをしてもよかった。
完全に得点王のチャンス。
しかし、トーレスはブッフォンをひきつけて、右にいたマタにパスをした。
より確実な人がゴールを決めるーー。
最後の最後に、デボルスケが望んでいたプレイをトーレスはした。
単独得点王というエゴを捨てて。
トーレスは駆け寄るチームメイトに「祝福」されていたように思う。
ユーロ2012決勝
スペイン 4-0 イタリア
得点王(3点)
フェルナンド・トーレス
バロテッリ
クリスチャーノ・ロナウド
ゴメス
マンジュキッチ
ジャゴエフ
追記 トーレスはアシスト数、出場時間を考慮して、ゴールデンブーツ(得点王)を獲得した。
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