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欧州のディーゼル神話は、PHEV神話へ。このままなら、欧州の新車は売れなくなる。

ByRem York Maash Haas

10月 21, 2015
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ロイターがフランス当局がVWに対して捜査を開始したことを報道している。

当局はロイターに対して、立ち入り捜査はまず予備的なものだと語っているが、どこまで大々的なものになるのか、メディアとフランス国民は注目している。

捜査は2週間前に始まったドイツ当局の流れに乗ったもので、ドイツの場合は幹部のプライベートの家も対象になった。

フランスでは対象車が94万6092台で、パリの近年のスモッグ問題があるだけに衝撃は大きい。

ドイツ政府はリコールについて2016年から始まると発表していて、フランスも順次開始するとみられている。

 

VW事件は発祥のアメリカではなく、何よりもドイツ本国、そしてウェスタンヨーロッパに衝撃を与えている。

 

http://autoweek.com/article/car-news/report-vw-offices-france-raided-police-diesel-probe

 

 

また、VWはクリーンディーゼルからの方向転換を発表しているらしく、そこにいくつかの意味を込めている。

「ヨーロッパと北米のディーゼル車に最新の排気処理装置をインストールする。ディーゼル車は将来的にもベストな環境性能を備えた排気装置となる」

これには、それぞれのエリアでディーゼルエンジンは見捨てられていないことを意味する。

ディーゼルの排気規制も将来的には乗り越えられると考えているということだ。

しかし、現実もしっかり見ている。「将来的にブランドは自らをリポジショニングする」ともCEOのDr. Herbert Diessは表明しているのだ。

「より環境的で、コアテクノロジーに新しい視点を与える。環境性能開発もスピードアップさせる」

つまり、EVとPHEVへのシフトも進めるということだ。ディーゼル「重視」はやめるということになる。

 

実際にVWはピュアエレクトリックの車やPHEV車、ハイブリッド車の開発を進めていて、2020年までに20種のEV、PHEVを発表するとしている。

他のヨーロッパ勢にもPHEVなどに急激にシフトしている動きがあるが、それを日本では「素晴らしい」「脅威」と捉える向きがある。

今まではヨーロッパのクリーンディーゼルの状態が結局は闇に包まれていて、日本からはその正体が掴めない分、「素晴らしい技術」という過大評価がされていた。

このEV系技術についても、すでに過大評価は始まっている。

最近読んだ日本の記事では、「ヨーロッパはPHEVにシフトしていて、日本の数年先を行っている」というものもあった。

しかし実際はヨーロッパのガソリンエンジンもディーゼル技術も、ハイブリッドもEVも、日本に比べると数段後れていると言ってもいい。

 

 

まず現時点の環境性能がそもそも良くない。

米国では2014年の平均燃費基準でダイムラー、ボルボ、フィアット・クライスラーが未達だった。

BMWもギリギリで、それより少し上のVWよりホンダ、トヨタ、マツダ、ニッサン、三菱はすべて上にいる。

彼らがクリアしているのは、ディーゼルによるCO2のヨーロッパ基準であり、それもディーゼル基準の見直しによって大きく揺らぐのは必至だ。

 

しかし、「遅れている」というのはそういうことではない。

「ニーズの把握」が遅れているのだ。

日本ではトヨタとホンダのおかげでHVは磨きがかかり、ユーザーもHVのことをよく知っている。

そして、リーフとアウトランダーのおかげでEV、PHEVについて考えることも多い。

しかし、ヨーロッパは2020年以降の環境性能に間に合わないという理由で作っているだけで、ニーズに対するコンセプトが薄い。

誰が求めているのか、という部分がユーザー側もメーカー側も歴史が浅いのだ。

 

トヨタがEVに興味がないのを考えれば、それはわかる。

 

 

 

 

欧州PHEVは本当に凄いのか。

 

VWをはじめとする欧米はクリーンディーゼルの次はピュアEVに近いものを想定していて、レンジエクステンダーで航行距離を伸ばすものか、EV比率が大きいPHEVなどを考えている。

私は個人的にPHEVの仕組みは好きだ。

「ガソリンを入れて走る」という単純な仕組みに比べて、車の用途を替えるようなポジティブな力がそこにはある。

キャンプで電気が使えるとか…(実際はキャンプ場に電気はあるし、使うことはあまりない)。

だけど、欧州が発表するPHEVは結局、値段が高い。

将来ピュアEV車を各社がもっと増やしたとしても、相当高い値段になるだろう。

 

「性能がいい」というのは、EVのみでの航続距離で判断される場合が多い。

ゴルフは50km以上走る…となると、プリウスHVはその半分くらいじゃないか…と。

しかし、距離を伸ばすのは単純なことだ。

バッテリーを大きくするだけ。

つまり、値段を高くして、重量を重くするのをいとわなければ、トヨタも今すぐにできる。

でもしない。

それは、ニーズをよく知っているからだ。

 

 

実際に購入するとなると、大きいバッテリーの問題に向き合わざるを得ないだろう。

充電したものすべてを使い切ることがなければ、無駄になるからだ。スマホと同様、充電した電気は、少しずつ放電していく。

大きければ大きいほど、無駄になる量も凄い。充電時間も長くなる。

劣化も早くなるだろうし、何年持つのだろうか。

 

途中で充電するにも、何時間もかかる。

普及すればするほど、充電ステーションは混雑するだろう…。

トヨタのプリウスPHEVは、バッテリーの劣化を防ぐために小さくして使い切るようにしたり、外では充電しないで、家だけで充電するような仕組みにあえてしているという。

PHEVでもHV側をメインにしているのには、そういった理由があるのだ。

 

 

欧州PHEVは、こういったニーズの問題を解決しないまま、次に来る規制に対応するためにやむなくシフトを変えている。

HVなら現状のままガソリン車と同じ感覚で受け入れることができるが、PHEVは別モノだ。

まず高い。

次に、家で充電ができないとまったく使えない。それを多くの人の家庭で実現できるのかというと、非常に厳しい。

月極駐車場なら、本当に無理だ。

 

ということは新車を買ってくれる大都市で売れないことになり、それ以外の場所や国では中古車が人気だから、やっぱり売れない。

中古のHVやPHEVなんて、現時点では正直、買いたくない。

バッテリーの劣化はエンジン劣化の比ではない。

 

それなのに、カルフォルニアは本当にEVをメインにしようとしている。

ヨーロッパも追随しようとしている。

新車は、売れなくなるのではないだろうか。

 

そう考えると、夢があるのは内燃の究極HCCI(実現するかわからない)や、HVの究極(ちょっとのガソリンとちょっとのバッテリーですごい走る)、そして充填に時間のかからない水素(水素の値段がカギだけど)だ。

せめて日本はゼロエミッションヴィークル規制を焦ることはない。

水素はぜひ頑張ってほしい。

 

VWのお家騒動を前回の投稿で書いたが、ニーズも含めたヴィジョンをしっかり提示した上で、リスク覚悟で研究開発する力は、VWにはないと考えざるを得ない。

世界をリードするには、まだ力が足りなかったのか。

 

 

備考

環境性能開発にはお金がかかる。

トヨタが常に世界をリードしているのは、その純利益が圧倒しているからだろう。

2014年は2兆1733億円で、VWは1兆5186億円。ベンツのダイムラーが1兆0206億円。

他はBMWから1兆円を切っていて、戦いになっていない。

研究開発費は順に1兆0045億円、1兆8368億円と上位2社が圧倒。

トヨタの1兆もすごいが、VWがどれだけ研究開発で何かをしようとしていたかがわかる。

 

 

 

 

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